過去に触れる――歴史経験・写真・サスペンス



書名 過去に触れる――歴史経験・写真・サスペンス
本体 5,000円
定価 5,400円
著者 田中 純

冊数:


「名のないもの」たちの記憶と秘密

歴史的想像力が極度の緊張を持って過去に向かうとき、いまだ決定されていない未来がたちあがる。

歴史経験の現場で、思考の襞をたどる――

堀田善衞、宮沢賢治、橋川文三、松重美人、畠山直哉、牛腸茂雄、多木浩二、ヨーハン・ホイジンガ、アビ・ヴァールブルク、ジルベール・クラヴェル、ダニエル・リベスキンド、W・G・ゼーバルト、ヴァルター・ベンヤミン、ロラン・バルト、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン

◆A5判 並製 620頁
本体価格 5,000円+税
◆ISBN 978-4-904702-60-4 C3010
◆2016年4月刊行
◆ブックデザイン 原研哉+大橋香菜子


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「過去に触れる」という「歴史経験」を探究するエッセイ集成。とりわけ写真を通した過去との接触という出来事に着目して、小説家、詩人、思想家、建築家、美術史家、文学者、写真家たちの具体的な歴史経験から「過去に触れる」瞬間を描きだす。また、その経験を伝達する歴史叙述のあり方を「サスペンス」の原理のうちに見出し、本書の探究もまた、サスペンスの様相を呈したスリリングな展開をみせる。「過去に触れる」旅の果てに見えてくる、歴史および写真における「希望」とは何か。書下しを含めた19本のエッセイでつむぐ。図版127点収録。

●著者プロフィール  

田中 純 (たなか じゅん)   Blog (Before- & Afterimages)(公式ブログ)

1960年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授・表象文化論(思想史・イメージ分析)。
[主要著書]
『都市表象分析IINAX出版、2000
『ミース・ファン・デル・ローエの戦場』(彰国社、
2000
『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』『死者たちの都市へ』(青土社、
20012004サントリー学芸賞受賞)
『都市の詩学
――場所の記憶と徴候』(東京大学出版会、2007芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)
『政治の美学――権力と表象』(東京大学出版会、
2008毎日出版文化賞受賞)
『イメージの自然史――天使から貝殻まで』(羽鳥書店、2010)

建築のエロティシズム 世紀転換期ウィーンにおける装飾の運命』(平凡社新書、2011)

冥府の建築家 ジルベール・クラヴェル伝』(みすず書房、2012) 

 
『イメージの自然史――天使から貝殻まで』(羽鳥書店、2010)

   

●主要目次 

はじめに

序 危機の時間、二〇一一年三月

 第1章 歴史の無気味さ──堀田善衞『方丈記私記』

 第2章 鳥のさえずり──震災と宮沢賢治ボット

 第3章 渚にて──「トポフィリ──夢想の空間」展に寄せて

 第4章 希望の寓意──「パンドラの匣」と「歴史の天使」

I 歴史の経験

 第1章 過去に触れる──歴史経験の諸相

 第2章 アーシアを探して──アーカイヴの旅

 第3章 半存在という種族──橋川文三と「歴史」

 第4章 いまだ生まれざるものの痕跡──ダニエル・リベスキンドとユダヤ的伝統の経験

II 極限状況下の写真

 第1章 剥ぎ取られたイメージ──アウシュヴィッツ=ビルケナウ訪問記

 第2章 歴史の症候──ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『イメージ、それでもなお』

 第3章 イメージのパラタクシス──一九四五年八月六日広島、松重美人の写真

III 歴史叙述のサスペンス

 第1章 迷い蛾の光跡──W・G・ゼーバルトの散文作品における博物誌・写真・復元

 第2章 歴史素としての写真──ロラン・バルトにおける写真と歴史

 第3章 歴史小説の抗争──『HHhH』対『慈しみの女神たち』

 第4章 サスペンスの構造と歴史叙述──『チェンジリング』『僕だけがいない街』『ドラ・ブリュデール』

 第5章 歴史という盲目の旅──畠山直哉『気仙川』を読む

IV 歴史叙述者たちの身振り

 第1章 歴史の現像──ヴァルター・ベンヤミンにおける写真のメタモルフォーゼ

 第2章 記憶の色──ヴァルター・ベンヤミンと牛腸茂雄の身振りを通して

 第3章 「歴史の場(ヒストリカル・フィールド)」の航海者──「写真家」多木浩二

結論 歴史における希望のための十のテーゼ

註/跋/書誌/図版一覧/人名索引/事項索引

『過去に触れる』関連書籍リスト 選書・田中純

●書評情報
『美術手帖
』2016年7月号
『図書新聞』2016年7月23日号 上半期読書アンケート
『ハヤカワ ミステリ マガジン』2016年9月号「ミステリ サイド ウエイ」

『Book Club Kai News Letter』2016 summer (VOl. 102)

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