過去に触れる――歴史経験・写真・サスペンス
「過去に触れる」という「歴史経験」を探究するエッセイ集成。とりわけ写真を通した過去との接触という出来事に着目して、小説家、詩人、思想家、建築家、美術史家、文学者、写真家たちの具体的な歴史経験から「過去に触れる」瞬間を描きだす。また、その経験を伝達する歴史叙述のあり方を「サスペンス」の原理のうちに見出し、本書の探究もまた、サスペンスの様相を呈したスリリングな展開をみせる。「過去に触れる」旅の果てに見えてくる、歴史および写真における「希望」とは何か。書下しを含めた19本のエッセイでつむぐ。図版127点収録。 田中 純 (たなか じゅん) 1960年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授・表象文化論(思想史・イメージ分析)。 『建築のエロティシズム 世紀転換期ウィーンにおける装飾の運命』(平凡社新書、2011) 『冥府の建築家 ジルベール・クラヴェル伝』(みすず書房、2012)
●主要目次 はじめに 序 危機の時間、二〇一一年三月 第1章 歴史の無気味さ──堀田善衞『方丈記私記』 第2章 鳥のさえずり──震災と宮沢賢治ボット 第3章 渚にて──「トポフィリ──夢想の空間」展に寄せて 第4章 希望の寓意──「パンドラの匣」と「歴史の天使」 I 歴史の経験 第1章 過去に触れる──歴史経験の諸相 第2章 アーシアを探して──アーカイヴの旅 第3章 半存在という種族──橋川文三と「歴史」 第4章 いまだ生まれざるものの痕跡──ダニエル・リベスキンドとユダヤ的伝統の経験 II 極限状況下の写真 第1章 剥ぎ取られたイメージ──アウシュヴィッツ=ビルケナウ訪問記 第2章 歴史の症候──ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『イメージ、それでもなお』 第3章 イメージのパラタクシス──一九四五年八月六日広島、松重美人の写真 III 歴史叙述のサスペンス 第1章 迷い蛾の光跡──W・G・ゼーバルトの散文作品における博物誌・写真・復元 第2章 歴史素としての写真──ロラン・バルトにおける写真と歴史 第3章 歴史小説の抗争──『HHhH』対『慈しみの女神たち』 第4章 サスペンスの構造と歴史叙述──『チェンジリング』『僕だけがいない街』『ドラ・ブリュデール』 第5章 歴史という盲目の旅──畠山直哉『気仙川』を読む IV 歴史叙述者たちの身振り 第1章 歴史の現像──ヴァルター・ベンヤミンにおける写真のメタモルフォーゼ 第2章 記憶の色──ヴァルター・ベンヤミンと牛腸茂雄の身振りを通して 第3章 「歴史の場(ヒストリカル・フィールド)」の航海者──「写真家」多木浩二 結論 歴史における希望のための十のテーゼ 註/跋/書誌/図版一覧/人名索引/事項索引 『過去に触れる』関連書籍リスト 選書・田中純 |
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